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母子手帳を見返してみると、『出産』の項目等に身長・体重・頭囲が書かれています。身長や体重はわかるけど、頭囲ってなんのために測るの?と疑問をお持ちの方に今回は解説していきます。
成長の指標
身長・体重・頭囲は、発育を評価する上で計測できる重要な成長の指標です。
先の二者は、妊娠中のお母さんと本人の栄養状態に主に影響を受けます。
例えば平均出生体重は、国々の健康の指標と見なされており、発展途上国では未だに栄養失調が多いことから栄養豊かな国に比べて低い状況です。
身長も2-3歳頃の幼児期前半までは、お母さんの栄養状態に主に影響を受けます。
以後の成長は思春期前までの小児期が主に成長ホルモンから、思春期は成長ホルモンと性ホルモンから影響を受けます。なお稀ではありますが、染色体等の遺伝的要因、甲状腺ホルモン、両親からの愛着問題、先天的基礎疾患に伴う要因、骨系統疾患等も考慮すべきとは忘れてはなりません。
一方頭囲は、栄養失調で最も影響の少ない身体計測です。栄養失調の赤ちゃんでは、全体の体格と比べると相対的に頭が大きくなります。そのため発展途上国の赤ちゃんは、しばしば※水頭症を心配されることもあります。
※頭蓋内には髄液と呼ばれる液体がありますが、その髄液の循環が障害され、頭蓋内に髄液が過剰に貯留して、頭蓋内圧が高くなった状態
頭囲を計測する目的とは?
現在の日本では余り栄養失調が問題になることは多くありませんで、頭の大きさが注目されることは少ないかもしれません。
そのため頭囲は何のために計測するのでしょうと思われる方も少なくありません。
各種疾患からの頭囲異常も稀ながら存在しますので、頭の形とともに健診でも注目する必要があります。
なお、頭が大きい場合の多くは、家族性頭囲拡大や体自体も大きい場合です。しかし、水頭症、硬膜下水腫、脳腫瘍、巨脳症、蓄積病等稀な疾患もありますので、主治医の先生には相談をしましょう。
小頭症の診断は、頭囲の大きさだけでなく、子どもの体格に対する頭部の比率によってもなされます。出生時の体重と比較することは、重要な意義があります。
一方稀な頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋骨の縫合が早期に癒合する)は、対応が遅くなった際には正常な脳の発育に影響を及ぼし小頭症になる疾患です。最近話題になったジカ熱等の疾患もありますので頭囲が気になった際にも必ず主治医に相談をされて下さい。
成長の評価をする際のポイント
最後に成長を評価する際に大切な事として、
1)1回だけの測定だけでなく、成長曲線上に連続的に推移を評価することが何よりも重要です。
2)母乳栄養のお子さんが、母子手帳の成長曲線で小さめな際には、母乳栄養専用の成長曲線がありますので、ご担当医に相談をされて下さい。
3)平均値は正常と同義ではないという事です。最初はゆっくり成長し、後に予期しないスパートがかかることもあります。ご両親に似たパターンもありますし、子どもには多様な成長リズムがあります。お子さんの発育の個性を知る上でご担当医と一緒に連続的な成長の推移を見守ることが大切です。
4)身長と体重が何ヶ月で何倍になるというのは『平均出生体重児』で出産されたお子さんへの情報です。
平成17年頃からは低出生体重児が9%台中盤と、約10人に1人が該当するという統計が出ております。小さく生まれたお子さんには適応されないことも知っておくことは重要と考えます。
最近は頭囲を測ってもらう際に頭の形を指摘されて当院に相談に来られるケースも増えてきています。正確に赤ちゃんの頭の形を測定して現状を知りたい場合は一度、AHS Japanへご相談してみてください。
かただ小児科クリニック 院長 医学博士
【経歴】
慶応義塾大学病院小児科で初期研修後同大学勤務・東京都立清瀬小児病院(小児循環器・小児麻酔:現東京都立小児総合医療センター)・他慶應小児科関連病院勤務
【講師・委員】
獨協医科大学越谷病院小児科講師・埼玉県立大学看護学科非常勤講師・チャイルドシート検討会委員(日本小児保健協会)ほか歴任
【学会等】
日本小児科学会・日本渡航学会(認定医)・日本小児東洋医学会、日本小児心身症医学会会員ほか
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