
HOSHINOKO DAYORI
星の子だより

私どもは頭のゆがみを心配してお越しになる親御様とお話をしておりますと、「このくらいの頭のゆがみは体への影響がありますか?」と尋ねられることが少なくありません。
まず、大前提として頭のゆがみがあるからといって必ずしも体への影響が出るわけではありません。
軽度の頭のゆがみのお子さんについては、過度のご心配はご不要ですのでご安心下さい。
頭の歪みがあっても元気で健康に過ごしている方は少なくありません。しかしインターネットやSNSで検索すると、全ての頭のゆがみを放置すると肩こりや頭痛、顔がゆがむことも・・・などが書かれているのも現状ですね。
今回は頭のゆがみが体へ影響を及ぼす現時点での可能性やメカニズムについて解説していきます。
お顔、顎のゆがみ
斜頭症が重度であればお顔の左右差が生じる可能性があります。
例えば右の後頭部が扁平している赤ちゃんは、頭頂からみると平行四辺形のような形状になるので、右の前頭部が左に比較し突出します。
これにより左の眼窩が右の眼窩に比べて形状が横に細くなり、目の大きさに左右差が生まれます(右目が大きくみえます)。
一方人間のお顔はそもそも左右対称には作られてはいません。
笑った時の口角の上がり方や皺の寄り方に左右差があることによって、人間味が出ている人がいることも確かです。
頭の歪みからのお顔のゆがみが心配な方は、是非専門医に良性の頭蓋変形なのかと程度の評価について早期に相談をされて下さい。
歯科系異常
因果関係は明確にはなっていないのが現状ですが、重度の頭の歪みは、将来顎関節症や歯並びに影響するとの一部の報告もあります。
頭の歪みからのご心配な方は、是非早期に専門医に相談をされて下さい。
耳ズレからの眼鏡やマスク等の装着弊害
重度の斜頭症がある赤ちゃんの多くは耳の位置が左右でズレています。平側の耳が前方にシフトすることが多くなります。
ゆがみが重度であればあるほどズレが大きくなります。
ただし、耳の位置が左右で異なるからといって基本的には耳の機能には影響はありませんし、成長してメガネをかけるときようになっても、メガネ屋さんが上手にツルの調整をしてくれるので大きな不便はないでしょう。
しかし既製品のサングラスをかけるときに合わなかったり、マスクをつけると片方の耳だけ痛くなることや、片方が外れやすくなったりし不便を感じることもあると思われます。
斜視、視覚機能異常、頭痛
斜頭症には、斜視が多いとの報告があります。
一方短頭症には、眼球運動や視野異常を伴いさらに頭痛を伴うとこともあるとの報告も一部されています。
ご心配の際には、小児専門の眼科に相談されてください。
肩こり、側弯への影響
そもそも多くの頭のゆがみは、子宮内、出産時の産道通過の影響や生後間もない時期の向き癖等によって引き起こされる頭蓋冠の形状の変化です。
生後偏りのある頭の方を長時間下に就寝されますとその部分が扁平し、斜頭症(左右差)や短頭症(絶壁頭)などの変形が増強する可能性が高くなります。
頭の変形のピークは生後4ヶ月とされていますので、是非早期に”Back to sleep(仰向け寝)、Tummy to play(タミータイム)”の指導可能な機関にご相談されると良いと思います。
長時間頭の左右一方への偏りのある方を下にして寝ることは、将来の首の筋肉の左右差等に影響きたす要因であることは否定できません。
その後発育とともに首や体幹の使い方が左右でアンバランスとなり、筋肉の張り具合も変わっていき、やがて肩こり、側湾や頭痛に影響するかもしれないといった負の連鎖が生まれる可能性があります。
大人になってこの記事を読んでいる方の中にも「夜寝るときに首を左へ向けた方が寝やすい」「横向きで寝るのが苦手だ」「同じ方向でしか眠れないので朝起きたら首が痛い」という悩みを抱えている方もいるかもしれません。実はそれは頭の形が原因の可能性もあるかも知れません。
歩行の偏り
頭の形に左右差がある場合は、そのバランスを平衡に保つのが難しくなり、平坦になった頭の方に傾いて歩行するお子さんもいらっしゃいます。
後には多くは歩行の修正を習得するように見受けますので、長い目でみていただければと思います。
発達への影響?
頭蓋縫合早期癒合症の一部は、発達への影響をきたしますので、早期診断治療が大切です。
一方非癒合症の変形性斜頭症等の発達への過剰な心配は不要と考えますが、重度の位置的斜頭・短頭でご心配な際には、必ず早期に小児科医に発達評価と頭の形の介入について相談されると良いでしょう。
まとめ
AHS Japanの計測では5段階のゆがみレベルを基にお話しします。
レベル3の中等度以上であった場合、上記のような体への影響の可能性が少しずつ高まるのでスターバンドの適応となり、ご希望があれば製作可能です。
「(何もせずに)放っておいたらそのうち治るよ」と説明されることが少なくないようですが、早期に”Back to sleep、Tummy to play”を日常に取り入れていただくと改善の可能性が出てきます。
しかし、それでもゆがみが重度の場合や、将来の体へのリスクを重く受け止める方、家庭内の工夫が難しいようであればヘルメット治療を検討されても良いかと思います。
かただ小児科クリニック 院長 医学博士
【経歴】
慶応義塾大学病院小児科で初期研修後同大学勤務・東京都立清瀬小児病院(小児循環器・小児麻酔:現東京都立小児総合医療センター)・他慶應小児科関連病院勤務
【講師・委員】
獨協医科大学越谷病院小児科講師・埼玉県立大学看護学科非常勤講師・チャイルドシート検討会委員(日本小児保健協会)ほか歴任
【学会等】
日本小児科学会・日本渡航学会(認定医)・日本小児東洋医学会、日本小児心身症医学会会員ほか
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