
私たち家族は、この治療を通じて、たくさん夫婦で話をし、愛する息子と向き合い、より幸せな家族になれたと実感しています。そして何より、息子の治療が無事終了したことに安堵し、嬉しく思います。
息子の頭の形が歪んでいるのに気づいたのは生後2ヶ月ごろでした。いつも左側を向いて寝る癖があり、その影響か頭の形に明らかなゆがみがあることに気づきました。真上から見ると、平行四辺形とでも言いましょうか、 “どこが正面かわからない”という表現がぴったりな頭の形をしていました。最初は少し気にしていたものの、生活していく中で自然に治る、あるいは治していけると考え、日常生活の中でできることを実践しました。頭部や肩にタオルをはさみ、横向けに寝かせることや、息子に声をかける、おもちゃを枕元に置くなど、できるだけこちらが意図する方を向くように工夫しました。しかし、症状は全く変わらず、むしろ改善するどころかよりゆがみが目立っていく一方でした。「息子に、頭の形がゆがんでいることを気にしてほしくない。」不安はいつしか息子の将来の心配につながっていきました。
より効果的な治療方法は何かないのかと、インターネットで検索し、解決方法を探している中で到着したのが、AHSでした。本当は、息子が大きくなった時に、本人の意思でスターバンド治療をするかしないかという選択ができることが一番いいと思っていましたが、治療できる期間がまさにこの時期と決められていたため、治療の決意に少し迷いがありました。小児科の主治医の先生に治療の相談をすると、既にヘルメット治療について知っており、「いつか、歯の矯正みたいにメジャーになっていくのではないかな。経過を教えてね。」と言って、快く紹介状を書いてもらいました。そんな後押しもあり、何度も何度も夫婦で話を重ね、私たちは今できることをしてあげたいという結論に至り、AHSでの治療の決断をしました。
スターバンド治療を始めるまでは、息子が治療を嫌がらずに生活できるかどうか、という不安やかわいそうかもしれないという心配が大きかったものの、装着が始まると、汗ばんだ頭を拭いたり、スターバンドを干したり、かわいそうと思っている暇もなく、あっという間に時が過ぎていきました。息子もはじめの一週間ほどは嫌がり、ぐずぐず泣いていたものの、すぐ慣れてしまい、夜も全く起きずに朝まで寝てくれました。治療期間中は、私たちの周囲でさまざまな意見がありました。『かわいそう』や『そんなの大きくなったら治るのに必要ない』といった否定的な意見もなかにはありましたが、育てているのは私たちであり、夫婦で悩みに悩んで至った選択だったので、あまり気にせず「そんな意見もあるよな。」というくらいに受け取っていました。しかし、その一方でとても肯定的に捉え、『今そんな治療もあるのね』と感心する人や『自分の息子にも同じようなことをしてあげたかった』と後悔している人にも出会いました。またフォローアップの頻度は、1カ月に1回、移動時間は和歌山から大阪までの間を、自動車で1時間10分程度。交通の便が良かったため、通院の負担はほとんどなく、良くなっているという嬉しい経過を聞くことができ、そしてついでにお出かけもできるため、私たちは毎回このフォローアップをとても楽しみにしていました。
治療をはじめて約5カ月、ついに息子はAHSを卒業しました。生後5ヶ月だった息子は今では10か月。生後見た目は劇的に良くなり、今では少し名残があるかなあ、という感じです。スターバンド治療をして本当によかったと、夫婦でよく話をしています。
私たちは、たまたまインターネットでAHSのことを知り、スターバンド治療をすることができました。しかし、実際には治療のことを知らずに、タオルを挟んだり、枕を使ったりして、でもなかなかゆがみが治らず、悩んでいる方もいると思います。そのため、この治療体験記を通じて、是非選択肢の一つとして、スターバンド治療を知っていただきたいと思いました。 |